カウンセリング実践報告 患者の実態に迫る!

健康・栄養カウンセリングアカデミー卒業生の実践報告から、一部抜粋したものをご紹介いたします。

学んだことを、現場で活かしている様子が伺えます。

栄養相談におけるカウンセリング技法の必要性について

東京校 中山智美さん(管理栄養士)

私は栄養相談を4年ほどおこなってきた中で、栄養相談の結果をデータの改善などにとらわれ「患者様の行動変容」や「その背後にある感情」は軽視し、コンプライアンス行動に迫る栄養相談を行ってきた。結果が出せないのは「患者様のやる気や理解がないからだ」、「私自身の栄養学的知識や経験の少なさからだ」と患者様や自分自身を責めることも多くあった。

栄養カウンセリングを学ぶなかで「4つの基本姿勢」を軸に「患者様の気持ちに寄り添う」ことの大切さを学び、コンプライアンス行動に迫る栄養相談ではなく、セルフケア行動に働きかける栄養相談の必要性を痛感した。

では、はたして栄養相談に来室される患者様にどのような栄養相談が必要なのか、カウンセリングを必要とする患者様がどれだけいるのかの調査を行った。

【調査方法】
(1)調査期間 : 平成19年3月16日から4月14日
(2)対象 : 栄養相談に来室された患者様
         (71名 男性48名 女性23名 平均年齢 56.01歳)
(3)方法 : 栄養カウンセリングアカデミーの講義で用いた
「患者対応フローチャート」をもとに主観的に以下の分類をおこなった。

A群 共感的傾聴法 行動変容の動機がない
B群 ガイダンス
コンサルテーション
改善のための知識がない
C群 ストレスカウンセリング 改善のための必要な行動の理解はあるがストレスのために行動変容できない
D群 フラッシュバックカウンセリング 改善のための必要な行動の理解はあり、明確なストレスは感じていないが行動変容できない
E群 改善群 行動変容でき、データの改善が得られている改善群

 

【調査結果】

  栄養相談
初回
2〜3回 4〜6回 7〜9回 10回以上
A群(6人:8.5%) 3人 3人 0人 0人 0人
B群(9人:12.7%) 7人 1人 1人 0人 0人
C群(22人:31.0% 0人 1人 13人 1人 7人
D群(25人:35.2%) 1人 7人 11人 3人 3人
E群(9人:12.7%) 0人 1人 5人 1人 2人

結果グラフ1  結果グラフ2

      

A群の患者様に対し、共感的傾聴を行っていく中で動機を高めるためのガイダンスを必要とする患者様と、「どうせ長生きしたって、誰も喜ばない」などの発言をするフラッシュバックカウンセリングを必要とする患者様が見られた。

B群は栄養相談回数が初回の患者様が多く、初期栄養相談にはガイダンスやコンサルテーションが必要であると考えられる。

C群、D群のカウンセリングを必要とする患者様は66.2%と全体の2/3もいることが分かった。 E群の行動変容でき改善が見られる患者様は12.7%としかいないことが分かった。

【考察】
 今回の調査よりカウンセリングが必要と考えられるC群、D群患者様は66.2%であったが、A群、B群のなかにも動機をもてない、初回の行動目標が実行できないなどカウンセリングを必要とする患者様が含まれていると考えられる。

【まとめ】
 今回の調査を通し、栄養カウンセリングの必要性をあらためて感じた。つい目先だけの「できていること」、「できていないこと」だけを見てしまいがちであったが、その奥に隠れている感情や心傷体験に焦点を当てていくことの大切さを学んだ。 この1年間でカウンセリングを栄養相談の場で多少なりとも使う勇気は付いたと思う。

今後も、健康・栄養カウンセリングアカデミーで学んだ技術を活用し、行動変容できる栄養相談の実施とともに、自己成長に努めていきたい。

入院糖尿病患者における栄養カウンセリングの試み

京都校 山本 育子さん(管理栄養士)

【はじめに】
 栄養指導を効果的に行うためには、個々の患者の問題点とその背景を把握し、どう指導するかが鍵である。当院では入院患者の栄養指導において、初回は予め患者が記入した入院前の食生活アンケート調査用紙の内容確認および食生活の基本についてガイダンスを行っている(集団指導)が、現状のみの把握に留まり問題点の浮き彫りまで至らない、また明確な食生活上の問題点があっても現状では介入方法がガイダンス・コンサルテーションに留まり画一的な指導になりがちであった。

そこで食生活の問題点を確実に拾い上げるため、栄養カウンセリングアカデミーで用いた媒体『患者の話の分類シート』に基づき焦点を定めて、必要と考えられるアプローチにて栄養指導を進める方法を試みたので2例について報告する。

【事例1:概要】
H・Kさん 71歳 男性 

主病名 U型糖尿病、高脂血症
家族歴 特になし
現病歴 1992年近医で糖尿病を指摘され、自己流で食事・運動療法に取り組み、当初HbA1c5.4%であったが、2002年5月にはHbA1c7.8%まで上昇し、経口血糖降下薬を開始したがその後も血糖コントロール不良であり、処方変更追加繰り返すが効果なく、2005年6月HbA1c8.9%空腹時血糖163mg/dlで、血糖コントロールおよび糖尿病教育目的にて入院となった。
入院中処方 〈薬剤〉メトホルミン750r/日、グリメピリド3r/日、高脂血症治療薬(+)
〈食事〉エネルギーコントロール食 1600kcal 入院後、初回の病棟糖尿病カンファレンスでは各医療スタッフより、初回栄養指導、病棟糖尿病教室および回診時にも優等生発言でメモとり熱心、非常に前向きな様子との報告があった。

初回の患者の話を分類した(表1)ところ、以下の2つの問題点が考えられた。

(1)理解および負担:普段は入院中の食事の3倍量ほど食べており、味付けも濃くかなりギャップを感じている。原因の理解は可能であるが、今後の改善策についての見通しは不十分、負担感が大きいようである。退院後の具体的な食事療法のシミュレーションが必要。

(2)支援:妻とは食事を全く別々に作っている。今後食事療法を行い易い環境づくりにおいて支援の確保が必要。

(表1)患者の話の分類シートによる主観的状況

患者の話の分類シートによる主観的状況

 

【事例1:支援の経過】
 2回目の栄養指導(集団指導)は同じ病棟の糖尿病患者(ひとり暮らし女性77歳)と行った。

「入院して約2週間ですが、病院のお食事はいかがですか?」と開いた質問をしたところ、ひとり暮らしの女性の発言「入院中はいいが、退院後が不安」を受けて、「私も家内がいてもひとり暮らしのようなもの、続くかどうか不安です。レールからはみ出しそうで…。病院食のようにはいきません。」と語られた。不安な気持ちに共感し「ひとりでやろうと思うと不安ですよね、何があれば続きそうですか?」と期待の内容を確認した。

患者:「支えがほしいですね。見守ってもらえたら安心です」

栄養士 :「支えがあれば安心して食事療法も続けられますよね、もちろん退院後も引き続き見守らせて頂きますよ」

患者:「そう言ってもらえると安心します」

そこで退院後の具体的な食事療法について栄養指導(ガイダンス)を行った。

指導後の患者の感想
「病院食を見て難しく思っていたけど、お腹すいたら野菜をよけ食べればいいってことやな。今週末外泊しますから参考にします」

外泊後に再度栄養指導を行うこととした。糖尿病カンファレンスにて栄養指導状況を報告、 夫婦の問題とはいえ我々スタッフの関わりも重要。外来でもフォロー体制を整えることとなった。

3回目の栄養指導(個人指導)は外泊時の食事記録チェックを行った。「外泊してみてどうでしたか?」と開いた質問を行った。「あれから2回外泊しましたが、少なめに食べました。血糖値も落ち着いていてだいぶ自信がつきました。疑問点をいくつかメモしてきました。」 そこで疑問点についてひととおりガイダンスを行ったあと、支援面について確認した。

栄養士 :「前回『家内がいてもひとり暮らしのようなもので不安、レールからはみ出しそうで・・・支えがほしい』と言っておられましたね・・・。」

患者:「ええ、実はこないだの栄養指導をきっかけに、今後どう生きていくかを真剣に考えたら今のままじゃいけないと思い、家内に本気で向き合おうと決めて1回目の外泊の時に、思いきって今後こうしていきたいと思うことを伝えました。『もう私らも若くないし、身体も思うようにならなくなる時が来る。お前が悪なったらオレがみる。今まで買物も一緒に行ったことなかったがこれからはそういうこともしていきたいと思っている』・・・正直、今まで仕事1本で家庭のことは全部家内に任せっきりで、私が最初糖尿病になった時、家内と食事のことでもめて、もうそれやったら2階にもキッチンあるから各々ですることにして、意地になって頑張ってやって最初はよかったけどだんだん血糖が上がってきてもう何しても下がらなくなって医師から一度入院して整えようってことになったんです。妻はドラム缶体型。おかずが多いのとアルコール。寂しいのもあると思う。理解してくれたと思います。最初からはムリだと思うけど徐々にやっていきます」

《退院後1ヶ月目 外来にて4回目栄養指導実施》
・退院後食事記録を継続中
・量りを購入し毎食量っている
・1日1万歩を目標に歩いている

「入院した事で今後の目標が見つかりました。今はそれに向かって頑張っているところなんです。」 
体重64s 食事摂取量:E1500Kcal 栄養バランス良好

《退院後2ヶ月目 外来にて5回目栄養指導》
・毎日体重、体脂肪、運動量、食事内容、空腹時血糖を記録

「最近は朝食を妻と食べるようになりました。今まで別々のメニューを食べていたんですが、朝食を一緒に食べるようになって、ボクと同じメニューにしてみたら?と提案しボクが調理して一緒にたべています。話ながら食べるとゆっくり食べることができるし 笑いもあるので楽しい。」
体重63s 食事摂取量:E1300Kcal 栄養バランス良好

体重及びヘモグロビン推移

 

【事例2:概要】
Y・Sさん 19歳 女性 

主病名 T型糖尿病
家族歴 特になし
現病歴 15歳発症。昨年7月外来にて栄養指導を受講し(発症時にも近医で受講済)、以後順調にHbA1c7.5%まで下がってきていたが、12月以降約3ヶ月間に急激な体重増加およびHbA1c9.1%と高値となり、血糖コントロールおよび糖尿病教育目的にて入院となった。
入院中処方 〈薬剤〉超速効型インスリン朝昼夕+超持続型インスリン眠前
〈食事〉エネルギーコントロール食 1900kcal

入院後、初回の病棟糖尿病カンファレンスで主治医より、「大学でひとり暮らしを始めたが食事がうまくできていない。受験があったりで気が回らなかったのかも。大学で友達に病気のことを言ってないらしく、昼食は血糖値を測らず決まった単位数打って食事後トイレで測って追加打ちをしている。また、今日初めて聞いたが今回の入院も友達には『旅行に行って来る』と言っている。」との報告があった。

初回栄養指導での患者の話を分類した(表2)。明らかに食事療法を実施する上での妨げとなる「よくないと思いながら取ってしまっている」行動があり、今後の食事療法継続においては支援の確保が重要であると考えられた。アプローチ方法として行動変容カウンセリングを用いた

(表2)患者の話の分類シートによる主観的状況

患者の話の分類シートによる主観的状況

 

【事例2:支援の経過】

課題
(訴え)パンがやめられない。血糖値が高いと思った時はやめたい。
面接
栄養士:その後いかがですか?
患者:昨年7月外来で栄養指導を受けてから、順調にHbA1cが下がってきていたけど、 12月以降約3ヶ月で体重が4sも増えてしまって・・・。学校の授業が終わって
17時前買物のついでにパンを買い、血糖値が高いとわかっていても食べてしまい
ます。パンを食べる時はインスリン3単位打って、夕食の主食はパンの分減らし
て食べています。
状況
(理由)
・パンがすごく好きで、できたてパンを見ると買ってしまう
・テスト前とかストレスかかったらパンの量はハンパじゃない
・今後を間食なしで生きていくつもりなんてない 普通にしたい



(守れなかったことについての気持ち)
 情けない

(もし、実行できたら)
  測定不能が出ない 安心

(もし、実行できなかったら)
  合併症が出る   不安 (妨げる感情)   
  ヤケ 怒り 嫌悪感(世間一般、CM、友達に対し)

・何で私だけ食べる罪悪感を持たないといけないんだろう!
  →やったことの見返りが欲しい、頑張ってるのをわかってほしい
・誰にも言ってない 言っちゃうと取り返しのつかないことになりそう
  →対等でいれなくなる→疎外感 
フラッシュバック感情
トラウマ感情 : 嫌悪感
心の声   : 何でなん?!
キー状況  : 自分だけが人と違うことをしないといけない時
過去のトラウマ体験
修学旅行に行くのに、先生は低血糖大丈夫だから行こう、と言ってくれたが、お母さ
んはややこしいから迷惑かけちゃいけない、といろいろ心配して結局行かなかった。
行ってないのに文集を書かされた。
STEP1
お母さんに信用してもらいたい。

母:「お母さんはね、あなたが病気でも健康でも勉強できてもできなくても太くてももうどんなあなたでもあなたのことまるごと大好きよ。そのままでいいのよ。お母さんはどこにいてもいつも見守っているからね。あなたがいつでも困った時は一番にかけつけるよ。だから安心して行っておいで。」
STEP2
私:「お母さん、お母さんが私のこと心配してくれているのはよくわかってる。でも私修学旅行行きたい。お母さんに言われると、したいと思ったこともやっぱりやめようかなって思えてくる。もっといろいろやりたいこと楽しみたいこといっぱいあるの。あきらめるよりやって行ける人になれるよう応援して」
母:「そうね、ごめんね。お母さんはどんな時でもあなたの一番の応援者でいるね。」
私:「うん、ありがとう」
逆流説明
自分の本当の気持ちをわかってもらえていないまま、決められることに嫌悪感を感じ る。
気づき
自分の気持ちを伝えてきていない。自分を信じて本当にしたいことを伝え、やっていくことが大事。
新たな心の声
(自分を信じて)本当にしたいことをしよう。
決断と自信度
今の何も言ってきていない自分は本当の自分じゃないと思うので、言い易い人から、・・・家の前に住んでる「今回アレルギーで検査入院する」と言って来た人にまず言ってみようかな。わかってもらえる人が近くに1人でもいたら気をはらずにラクでいれそう。そしたらヤケを起こして過食することもないと思う。  自信度75%

 

体重及びヘモグロビン推移

【考察】
 《事例1》は患者の不安な気持ちに共感し期待の内容をきいたことで患者自らが今後どうしたらいいかがわかり、行動に繋がったと考えられる

《事例2》は行動変容カウンセリングの手順で、過去のできごとの確認の際、3年前(T型糖尿病発症時)の過去に留まった。フラッシュバック感情を『いかり』嫌悪感ではなく、『悲しさ』疎外感もしくは孤独感でとらえた方がよかったかもしれない。退院後の継続フォロー時、経過を確認する必要がある。

【まとめ】
 今回何が食事療法の妨げになっているかを2事例を通して分類シートにて明確にして栄養指導に生かすことを試みたことで、必要なアプローチをその場で判断し、焦点を絞って行うことが重要だということがわかった。また食事療法の妨げとして2事例も含め、いかに支援の欠如を感じている患者が多いかということが浮き彫りとなった。短い面接時間の中でそれを気づいた時にどうアプローチするかはまさに栄養士の技量にかかっているということが実感できた。今後更に訓練が必要である。

 

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